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夕染逢想

時間切れだね

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吊れますか。

夕方以降の福岡天神駅。仕事帰りのサラリーマンや買い物帰りのお姉さんたちであふれる駅構内。
電車を待つ列に並んで他愛のない話をする。
電車が来ると待ってた人たちが足早に乗りこんで、空いてる席があっという間に埋まる。
席に座れなかった人たちはそれぞれ壁際に立ったり、席があいたらすぐ座れるようにつり革を持つ。



僕は適当な場所でつり革に手をかける。持つのではなく、手首を引っかけるように。
混んでるねと声をかけて、出発を待つ。
外の喧騒と隔離された不思議な静けさを持つ空間。
かけた手首に体重がかかり、少し痛みを感じる。
つり革のプラスチックの温度が僕の手首の温度を奪っていく。手首から繋がる僕と電車。

動き出すと慣性の法則に則り僕の体はバランスを崩して手首にもっと負担がかかる。少し軋む手首とつり革。
繋がっているから、どちらも痛い。

出発しては止まりを繰り返す内に、君は電車を降り僕は一人。車内の人は半分ほどに消えて、つり革を持つ人は僕を含めてごくわずか。

未だ繋がったままの僕と電車。窓の外は流れる風景。街の光。
車内は僕と人と蛍光灯の光。

暗闇の中走る電車。

つり革に手をかける僕。

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